発熱のメカニズム：2022年12月23日｜立町庵のブログ

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投稿日：2022-12-23 17:15:41.0

発熱のメカニズム: 　発熱をもう少し掘り下げてみます。
　発熱は脳の指令によって引き起こされる体温上昇です。
　ウイルスや細菌などは、上気道などの組織を損傷させます。その損傷を受けた上気道などの細胞膜にあるリン脂質という物質は、ホスホリパーゼA2という酵素によりアラキドン酸に変わり、更にシクロオキシゲナーゼという酵素によってプロスタグランジンが生成されます。また損傷された組織は、すぐに白血球や肥満細胞、マクロファージなどが集まり、修復をはじめます。そしてその周りの血液が固まり出し、その時に放出されるブラジキニンは、血管を拡張させて白血球を更に誘導するとともに、肥満細胞や好塩基球を増やして免疫系を増強させます。
　そのブラジキニン。損傷した組織周囲の血管から漏出した血漿キニノゲンから生成され、ポリモーダル受容器というどんな刺激にも反応する器官によって、痛覚過敏を引き起こします。この作用は強力です。
　また、ウイルスや細菌などの病原体は、各細胞の表面にあるトル様受容体という、自然免疫を作動させる器官によって認識されます。そのトル様受容体が刺激されると、インターロイキン1βなどの炎症性サイトカインが細胞から血液の中に出されます。この炎症性サイトカインは、血流にのって脳血管内皮細胞まで行くと、炎症性サイトカイン受容体にくっつき、プロスタグランジンE2の産生を促します。そしてプロスタグランジンE2は脳内に入り、視床下部視索前野のプロスタグランジン受容体EP3にくっつきます。プロスタグランジン受容体EP3から信号を受けた脳は、交感神経を経由させて、骨格筋や褐色脂肪細胞、血管平滑筋などに指令を出します。指令を受けた骨格筋は収縮し、からだをふるえさせて熱を産生します。また褐色脂肪組織はふるえを起こさず、熱産生タンパク質に直接作用して、熱を作り出します。また、交感神経は、皮膚血管の周りを取り囲む平滑筋に指令を出し収縮させ血流が減らし、放熱反応が抑制されます。さらに厚着をするなどの行動性体温調節反応が加わって，体温が上昇します。これが発熱です。
　ウイルスや細菌などに対して、体の中では、まるで玉突きのように、どんどん先に先に反応していくのですね。
　白血球などの免疫系細胞は39.0から40.0℃で最も威力を発揮し、しかもウイルスや細菌は高温に弱く死滅しやすいのです。つまり発熱は、実に理にかなった防御反応なのでお忘れなく。