読書の記～手の倫理～：2024年4月11日｜身心専科のブログ

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投稿日：2024-04-11 11:04:48.0

読書の記～手の倫理～: （伊藤亜紗著「手の倫理」講談社刊）

　自分も人の身体に触れる仕事なので手に取ってみました。

　　道徳と倫理、「ふれる」と「さわる」の違い。

“倫理には、道徳とは違って、いつでもどこでも通用する「一般」はありません。この意味で、倫理は常に生成的です。”

　二つの違った概念を補助線にし輪郭を明確にしてゆきます。

　特に以下の引用、

“触覚以外の五感に関しては、一般に、「色を見る」「音を聞く」「臭いを嗅ぐ」「甘さを味わう」というように、対象をあらわす助詞として「を」を用います。ところが、「ふれる」に関してだけ、「額にふれる」などと「に」が使われるのです。このように「に」が用いられるのは、「ふれる」が、その他の感覚とは違って、主体と客体を明確に分離せず、内部に入っていく感覚だからだ ”
(Photo by Jonas Vincent on Unsplash)

　触覚とその他の感覚の違いを助詞の違いから説明する手法は鮮やかです。
　対象との距離はゼロではなくマイナス。相手の内側に入っていくが故に一般性より、個別性が高く、常に生成的な倫理が求められるという指摘に納得感が出て来ます。

　個別の話に関しては目の見えないランナーと伴走者とがロープを通して共鳴し合うという場面にとてもライブ感があり興味深かったです。

　ケアに携わる人以外にも示唆を得られる良書です。
　
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